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技術・開発

2008/01/21

靱性と耐食性を大幅に向上した粉末ハイス「SPMR8」を開発

 山陽特殊製鋼株式会社(社長藤原信義、本社姫路市)は、中期連結経営計画(平成17~19年度)の中で、「『高信頼性鋼の山陽』のブランド力強化」を重点施策のひとつとして掲げております。この一環として、靭性と耐食性を大幅に向上した粉末ハイス「SPMR8(エスピーエムアールエイト)」を開発しました。

 粉末ハイスは、粉末固化成形法で製造される高速度工具鋼です。自由な合金設計や均一で緻密な金属組織といった特長が、高靭性、高強度、高耐摩耗性を実現しており、塑性加工用の金型や工具の材料として、近年、利用が進んでおります。しかしながら、被加工材の高強度化や形状の複雑化、複合素材の成形など、金型の使用環境はさらに苛酷化する傾向にあり、例えば冷間鍛造用途ではより高い靭性が、また、プラスチック成形用途ではより高い耐食性が求められておりました。当社は、このようなニーズに応えるべく研究に取り組み、このたび、その2つの特性を大きく向上させたSPMR8を開発したものです。

 SPMR8の靭性は当社粉末ハイスSPM23の約3倍を実現しており、金型使用中の早期割れ・欠けの発生の抑制に貢献します。また耐食性は、各種の酸の腐食環境において優れた性能を発揮します。特にプラスチックの難燃剤として添加される酸に対する効果が顕著であり、腐食に起因する早期摩耗を抑えることに寄与します。しかも、これら二つの特性を伸ばしながら、高い強度、耐摩耗性は損なわれておりません。

 使用環境にもよりますが、この卓越した特性から、金型、工具寿命は、汎用粉末ハイスに比べておおむね2~3倍に改善します。これにより、需要家において、長寿命化による金型費用低減が期待されます。

 SPMR8がターゲットとする主な用途として、冷間鍛造金型、冷間加工用のロール、マンドレルなどが挙げられます。当社はこれまでに、冷間マンドレルやパンチ、プラスチック成形機用部品向けを中心にSPMR8のサンプル出荷を実施しており、すでにテストを終えた需要家からは高い評価を得ております。

 当社は、金属粉末事業における今後の営業戦略の中で、粉末ハイス製品の販売を伸ばしていきたいと考えております。このSPMR8はその中核製品と位置付けており、これからも、金型や冷間加工用工具をはじめとする幅広い用途に向けて、販売を拡大していく所存です。

 当社では、今後とも品質、開発、安定供給のあらゆる面において、的確な対応をとることにより、「高信頼性鋼の山陽」のブランド力の強化を図ってまいります。


粉末ハイス「SPMR8」の位置づけ


靭性、耐食性において工具鋼SKD11や当社粉末ハイスSPM23の上位に位置します。

【用語解説】

 

・靭性

材料の割れ難さ、欠け難さをあらわす特性。靱性が高いほど、割れ、欠けが生じにくく、より厳しい応力環境下でも使用できる。一般的に靭性と硬さはトレードオフの関係にあるが、SPMR8では、靭性と硬さを高いレベルで両立させている。
 

・耐食性

 材料が酸溶液やガスなどによって侵食・腐食される現象に対して耐える能力。
 

・ハイス
 (高速度工具鋼)

 「ハイス」の呼称は「高速度鋼(ハイスピード・スチール)」が縮まったもの。高温下での耐軟化性を高め、より高速での金属材料の切削を 可能にする工具の材料とするべく開発された鋼。
 

・粉末固化成形法

金属粉末を高温下で加圧加工して所定の寸法・形状に成形する方法。焼結やHIP(熱間等方圧プレス)処理が一般的であるが、当社の場合は、HIP以外に鍛造、圧延、熱間押出など特殊鋼鋼材と同様の加工成形を行うことが可能。
 

・塑性加工

材料に大きな力を加えて変形させることによって、目的とする形状に加工すること。一般に他の加工方法より加工時間が短く、材料のロスが少ないため、工業製品の生産等に広く用いられる。被加工材を加熱する熱間・温間加工と加熱しない冷間加工とがあり冷間加工の方が大きな力を必要とするため、使用される加工工具にもそれに耐える強度と靭性が要求される。
 

・ロール

材料を挟み込みんで、回転することで連続的に所定の形状に加工する際に用いる円柱状の工具。
 

・マンドレル

中空状やリング状に成形加工中の材料を保持するための芯金となる工具。
 

・パンチ

抜き、曲げ、絞りなどのプレス加工における、雄型部品のこと。ダイ(雌型部品)とともに金型の基本構成部品のひとつ。
 

 

 

SPMR8を使用した工具例

 

注)これは需要家が当社のSPMR8を使用して制作した工具で、
  当社が写真の工具を製作しているわけではありません。 

以上



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