表面処理性に優れた冷間工具鋼QCM10を開発
〜 ダイス鋼の熱処理でハイス並みの型寿命を実現〜

  [2002/06/20]
 

  山陽特殊製鋼株式会社(社長 坂東邦彦、本社 姫路市)は、ハイス並みの高硬度と耐摩耗性を有し、硬質表面処理に適した金型素材として冷間工具鋼QCM10を開発しました。現在、社内の冷間圧延用工具に使用されて生産性向上に寄与していること、またユーザー数十社で進めているサンプル評価の結果がいずれも良好であることから、商品化を進めていくことといたしました。
QCM10は、当社の開発工具鋼QCMシリーズ(QCM7、QCM8)の第3弾として開発されたもので、新中期経営計画(平成14年度〜16年度)に掲げる「営業力の強化」を図るための拡販新商品の主力の一つとして育てていく計画です。なお、QCM10の詳しい技術内容は、6月24〜25日に東京大田区産業プラザPIOで開催される「型技術者会議2002」(型技術者協会主催)で講演発表する予定です。


【 背 景 】
最近の自動車・家電部品などのニアネットシェイプ化や高張力鋼のように素材の高強度化が求められてきたことに伴い、これらの塑性加工に用いられる金型には、これまで以上の耐摩耗性と耐焼付性が求められている。このような用途の金型は、従来の汎用冷間工具鋼(ダイス鋼)SKD11に硬質表面処理を施すか、より耐摩耗性に優れたハイス(SKH51)や粉末ハイスなどの高級鋼に高温の焼入処理(1200℃)をして使用しなければならなかった。しかし、SKD11では表面処理された硬質膜が剥離しやすく、ハイスでは素材費や熱処理費が高くなるなどの問題点があった。


【 QCM10の特長 】
QCM10は、主要成分のカーボン、クロム、モリブデン、バナジウムの配合バランスを最適化することにより、SKD11の熱処理条件(焼入:1030〜1050℃)で高級鋼並みの耐摩耗性を得ることができる。また、組織が均質なので表面処理性に優れており、SKD11の2倍以上の型寿命を実現した。

ダイス鋼の熱処理でハイス並みの耐摩耗性
一般に焼入温度を高めることにより高硬度を得ることはできるが、歪み、靭性、熱処理コストなどの面が問題となる。QCM10の最大の特長は、SKD11の熱処理条件(焼入:1030〜1050℃、焼戻:520〜540℃)でSKH51(焼入:1200℃)並みの高硬度と耐摩耗性を実現したところにある。これにより、金型の熱処理費用の低減や納期短縮が図れる。

硬質表面処理用の金型素材に最適
硬質表面処理膜の機能を最大限に発揮させるためには、その金型母材には、高硬度と組織の均質性が求められる。QCM10は例えばTD処理などの熱処理温度(1000〜1030℃)からの焼入れにおいても62HRC以上(SKD11より2〜3ポイント高い)の高硬度が得られる。またミクロ組織中の炭化物は微細に分散しており、密着性の高い表面処理層が得られるため剥離が起こりにくく、型寿命が大幅に向上する。

QCM10製マンドレルの画像


【 今後の展開 】
QCM10の用途は、ハイスが用いられているパンチ、ダイ、またバナジウム炭化物、チタン炭化物などの硬質表面処理が適用されているマンドレルやプレス金型である。その市場規模は、金型素材として少なくとも年間3,000t以上と推定される。本年秋頃の市場参入を目指し、在庫の充実と幅広いユーザーへのサンプル提供を一層進めていく予定。なお、販売価格はSKD11とSKH51との間に設定している。


 
【 QCM10の位置付け 】
図 QCM10の位置付け


【 用語集 】    
冷間工具鋼(ダイス鋼) 冷間(常温)でのプレス加工や鍛造に用いられる金型用の特殊鋼。
ハイス 高速度工具鋼(High Speed Steel)の略称。もともとは鋼を削る切削工具用に作られた鋼種であり、高硬度と優れた耐摩耗性を示す。ただし、材料コストは高く、熱処理も高温焼入を要するため容易でない。
ニアネットシェイプ化 素材(棒鋼・鋼管)のまま使用するのではなく、より最終製品に近い形にして使用すること。これにより調達側(部品メーカーなど)のコスト引き下げを図るもの。
高張力鋼 通称ハイテン(High Tensile Strength Steel)と呼ばれる。一般に引張り強さが490N/m2以上を有する鋼のことをいう。近年、軽量化と安全性向上を目指す自動車業界での適用が拡大している。
硬質表面処理 鋼材に耐摩耗性などの特性を付与するため、熱処理や吹きつけなどにより表面に硬い被膜層をつくる処理。
耐焼付性 金型と被加工材が接触する部分で、摩擦の増大に伴い発生する、・・・むしれや擦りキズを抑える特性。
粉末ハイス 金属粉末を原料として圧縮成形してつくられた高速度工具鋼。溶解でつくられたハイスに比べて、炭化物が微細に分散されており、靱性に優れる。
TD処理 熱処理により鋼材の表面にバナジウム炭化物を生成する表面処理方法。自動車部品の曲げ型や絞り型など、厳しい使用環境の金型においては、焼付対策として広く利用されている。
HRC ロックウェル硬さと呼ばれる鋼材の硬さ水準を表す単位。焼なまし材の硬さは20HRC程度であり、62HRCは非常に硬い。


以上
 
【 お問い合わせ先 】

山陽特殊製鋼株式会社 総務部 総務グループ 先水 (tel. 0792−35−6003)
Eメール: webmaster@himeji.sanyo-steel.co.jp



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